『WORK SHIFT ワーク・シフト』 リンダ・グラットン 著

先日の『ALLIANCE』に続いて、今回も私、管理人Nが強くお勧めする一冊を紹介する。

ロンドン・ビジネススクール教授の著者、リンダ・グラットンさんとその著書は有名なので、知っている人も多いかもしれない。

本書『WORK SHIT』(プレジデント社)の後には、『LIFE SHIFT ライフ・シフト』(東洋経済)や、「レジリエンス」のキーワードでも有名な『未来企業』(プレジデント社)も出版されている。

私の個人的な感想ではあるが、後の二冊よりも本書『WORK SHIT』が最も印象深く記憶に残っている。

話はそれるが、自民党の小泉進次郎氏がリンダ・グラットン氏と対談し、「100年時代の人生戦略」が一テーマでもある『LIFE SHIFT ライフ・シフト』に影響を受けているような姿もメディアで取り上げられ、話題にもなったので、記憶にある方もいるかもしれない。

さて、本書『WORK SHIT』に私が出会ったのは、2013年の春頃である。

私自身はフリーランスとして独立して初めての年、初めての春にあたる。

この『WORK SHIT』は2012年8月に第1刷が出ているが、私が持っているのは、2013年4月発行の第12刷版である。

当時、東京駅すぐそばのOAZO丸善で手に取ったように記憶しているが、こうして記事を書いていると、そのころのことが懐かしく思い起こされてくる。

では、本書ではどんな問題意識をもって、『WORK SHIT』という内容がつづられていくのか、まずこの点を紹介してみたい。カバー裏には次のような印象的なメッセージが掲載されている。


2025年、私たちはどんなふうに働いているだろうか?
「漠然と迎える未来」には孤独で貧困な人生が待ちうけ、
「主体的に築く未来」 には自由で創造的な人生がある。

次にプロローグを見てみよう。問題意識が明確に叙述されている。


過去二〇年間の働き方や生き方の常識が多くの面で崩れようとしている。朝九時から夕方五時まで勤務し、月曜から金曜まで働いて週末に休み、学校を卒業してから引退するまで一つの会社で勤め上げ、親やきょうだいと同じ国で暮らし、いつも同じ顔ぶれの同僚と一緒に仕事をする。そんな日々が終わりを告げ、得体の知れない未来が訪れようとしている。その得体の知れない未来について、私は知る必要があった。

確かなことはわからなくても、未来がどうなるかというおおよその方向を知り、自分の志向と価値観に沿った一貫した視点を得る必要がある。あなたが、私が、私の息子たちが、私たちにとって大切なすべての人たちが、働き方の未来を理解しなくてはならない。自分のために、そして大切な人たちのために未来に備えるうえで、それが不可欠なのだ。
そこで私は、どのような未来が訪れる可能性が高いかを極力精密に描き出すために、探求の旅に乗り出した。私が知ろうとしたのは、私たちの日々の生活に関わる次のような問いの答えだった。

2025年に、

私と私の友達、私の子どもたちは、どのような人生を送っているのか?
朝の10時には、どういう仕事をしているのか?
ランチは、誰と一緒に食べるのか?
どのような業務をおこなっているのか?
どのようなスキルが高く評価されるようになるのか?
私たちは、どこに住んでいるのか?
家族や友人と過ごす時間と仕事との関係はどうなるのか?
私たちは、誰から仕事の報酬を受け取るのか?
私たちは、いつ仕事を退くのか?

私たちの考え方や願望がどう変わるのかも知りたかった。具体的には、次のような問いに答えたいと考えた。

2025年に、

私たちは、どのような仕事観をもっているのか?
私たちは、どのような仕事をしたいと思うのか?
私たちは、どのような希望をいだくのか?
私たちは、なにが原因で夜眠れないほどの不安を感じるのか?
私たちは、自分のために、そして未来の世代のために、なにを必要と感じるのか?

今現在は2019年12月、年が明ければ2025年もあとわずか5年という未来だ。こうした問題意識の元、はじめに本書では暗い未来と明るい未来の姿を描き出している。「「漫然と迎える未来」の暗い現実」と題して「いつも時間に追われ続ける未来」「孤独にさいなまれる未来」など3点を詳細に述べているし、対して、「「主体的に築く未来」の明るい日々」として、これも同様に3章を設け詳述している。「ミニ起業家が活躍する未来」と題された章ほか3点あげられているがいずれも興味深い。

もう少し、内容の紹介を兼ねて、私が特に印象深かった点を紹介してみよう。

「第8章 第一のシフト」と題して「ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ」というメッセージが付されているところがあるが、以下のように述べれている部分がある。

「なぜ、「広く浅く」ではだめなのか?未来の仕事の世界で成功できるかどうかを左右する要因の一つは、その時代に価値を生み出せる知的資本を築けるかどうかだ。とりわけ、広く浅い知識や技能を蓄え見るゼネラリストを脱却し、専門技能の連続的習得者への抜本的な〈シフト〉を遂げる必要がある。多くの分野について少しずつ知っているのではなく、いくつかの分野について深い知識と高い能力を蓄えなくてはならないのだ。

簡単に書いてしまえば、サラリーマンであるより、「手に職」を持ったスペシャリストであれ、ということだ。それもたった一つの強みではなく、一つがダメになれば次の一つというように、リスクへ準備できていることが望ましいということである。

今ではウェブサービスも充実し、ハンドメイドのプロダクトで稼ぎを得ることができる人もいれば、Youtuberのように得意分野を生かして動画を配信し富を得る人もいる。軽い例ではあるが、まさに時代の潮流を端的に示しているといえよう。

ほかには、「セルフマーケティングの時代」と題された項では、以下のような興味深い記述がある。

未来の世界では、大企業にフルタイムの社員として勤務する固定的な労働形態で働く人の割合が低下し、専門知識を武器にプロジェクト単位で働く流動的なフリーエージェント型の働き方をする人が増えるだろう。そういう働き方を選べば大きな充実感を味わえるかもしれないが、問題は、仕事の世界で「見えない存在」になりがちなことだ。長期間にわたり同じプロジェクトに携わるケースが少なく、仕事上で関わり合う顔ぶれが頻繁に入れ替わり、一人ひとりが自分の専門技能をたえず変化させていくので、どうしてもそうなりやすい。第3章に登場したプログラマーのアモンは、カイロの自宅にいたまま、一度も訪ねたことのない会社の依頼を受けて、一度も会ったことのない人たちと仕事をしている。そういう仕事相手たちにとって、アモンは「見えない」誰かにすぎない。

未来の世界では、「見えない存在」になることが深刻な問題になるだろう。

私自身、端的に書けば「プログラマー」であり、実際はもう少し軽いタイプの職種なのだが、この「見えない存在になる」ということは、まさに時代の一特徴をはっきりと指摘していると思う。

私自身、ともすれば、一日に会う人が誰もいない、しかもそれが常態化するということがありうる世界に生きている。実際は、スーパーやコンビニに行ったりするので、まったく人に合わない日はないが、存在の希薄さという点では、想像していただけるだろう。

こういう生活、ライフスタイルになると、まさに「孤独」ということと向き合わざるを得ないし、逆に、人は、自分は「孤独」である、「孤独」であったと深く知るからこそ、自らの弱さや、生きるということへの本当の意味を見出すことができる。

その答えは端的に例えて書けば、クリスチャンのごとき生活である。「主なる神を愛し、隣人を愛す」という「愛」の態度、「愛」の精神でもって、「無」より、人とかかわることを始め、社会とかかわることを始め、まさに「愛」に生きる時に、人は真に幸福たりえるという真理を悟るのである。

かくて人は積極的な内なる光を知り、このようにただひたすらに「与える」ことを選ぶ人生こそが、より内なる光を輝かし、感じつつ、私の喜びであるということを知るに至る。

孤独の底を突き破った時に、光が溢れてくるのである。

***

さて、話は少しそれてしまったが、生き方、働き方、ライフスタイルというものが、WEBの普及とグローバリゼーションの中で大きく揺らぎ始め変化しているのが現代である。

そんな現代と、これからその特徴がもっとはっきりと表れてくる未来ではどういったことが大事だろうか。リンダ・グラットン氏は終盤で次のように述べている。

私にとって重要なことがあなたにとって重要だとは限らないし、私が望む働き方があなたの望む働き方と同じだとも限らない。私たちは、一人ひとりが自分なりの働き方の未来を築いていかなくてはならない。

自らの未来を明確に形作っていくためにも、本書『WORK SHIT』は格好の参考書となるだろう。

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